最近色々な世界文学作品に新訳が相次いでいます。現在古典として親しまれているドイツ文学、フランス文学、ロシア文学の翻訳は現在の大学生から考えると、曾祖父の世代です。大体明治40年前後に生まれた谷崎潤一郎や川端康成の同級生か後輩です。こういう人達の翻訳は大正モダニズムらしい余裕と落ち着きに裏打ちされた素晴らしい日本語です。しかしこうした日本語にも時代がついて来ました。四世代の差はいかんとも仕方がない。今、この現代日本の古典となった世界文学作品の日本語に新訳を試みているのは、こうした新しい読者の親世代。戦後安定した50年代半ば頃生まれ、80年代にバブル景気で世界に飛び出し直にアメリカ・ヨーロッパを味わった世代です。
このミラン・クンデラの短編集はそうした訳者によって翻訳された小さい作品集ですが、当時ノーベル文学賞をとって世界にその名を轟かせたクンデラの底抜けの諦観とユーモアの絶頂を日本語に移そうと七転八倒の試み。このタイトルもそろそろ訂正されたのかな?と思いきや、まだこのままだったか・・これは多分「愛の爆笑物語」の方が似合っているような気もするんですが・・それじゃあきっと、ノーベル文学者の品位を汚す冒涜的行為!とでも思われたのかな?
この短編集の中では、気鋭のロシア文学者沼野充義の「年老いた死者は若い死者に場所を譲ること」が秀逸。他の作品よりまとまったオリジナルとはいえ、素晴らしい翻訳作品です。若い30代前半頃の訳者の仕事とは思えない落ち着き。「私は禿げにはガマン出来ません。さらば!」と辞世の句を想像する20代後半に差し掛かった元学生運動戦士の鏡に映った自身の姿。年を経て昔の年上の恋人を自分の部屋に誘ってみたはいいけれど、その歳月を乗り越えてもまだ色香の衰えない永遠の女を押し倒してみると?なんだか彼女、前より歯並び良くなった?
面白さ爆発です。是非ご一読を御薦め致します。
微笑を誘う愛の物語
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