登場人物の時間と著者の時間が重なって流れつつ、短編同士が相互に絡み合って、主題の変奏を表していく、複雑で独特で巧妙な構成を持つ小説としても素晴らしいものであったが、小説の、文章の、物語そのものが印象深かった。
歴史の中から人知れず消えて忘れ去られた人々、記憶から何十万もの人生を消し去って無垢なる世界に生きようとした人々。
チェコからフランスに亡命せざるをえなかった小説家の背負う歴史は、それだけで私には重苦しい意味を彼に与えているように感じる。
無垢で無慈悲な天使の笑い。その天使達にレイプされる女性達が、チェコの大地だったのだろうかと想像が膨らむ。
愛について、性について、死について、孤独について、復讐について、忘却について、静かに深く考えさせられる本だった。
笑いと忘却の書
ミラン クンデラ/Milan Kundera/西永 良成
価格: ¥2,520 (税込) 単行本 出版社: 集英社 発売日: 1992/04 ISBN: 4087731464 おすすめ度: ![]() Amazon ランキング: 54707位 発送可能時期: 通常24時間以内に発送 ![]() |
私はクンデラの本はほとんど読みましたが、これが最高じゃないかと感じています。独立した6つの短編、クンデラ自身のエッセイが、いくつもの主題によって結び付けられ、一編の小説が編まれるその技法にも圧倒され、感心させられます。もちろん内容としても、人の孤独、理解しあうことの不能、熱狂とその輪に入れないことの苦しさ、その輪に入ることの恐ろしさが、静かに、ですがユーモアに溢れて描かれることに、この亡命小説家のキャパシティの大きさ、深さを感じずにはいられません。クンデラに興味のある方もない方も是非手にとって見てください。



