時は、近未来。
世界では核戦争が起こり、イギリス全土は廃墟と化した。
そんな折、イギリスから疎開する少年たちを乗せた航空機が、
南太平洋の孤島に不時着した。
豊富な食糧に恵まれた無人島は大人のいない楽園にみえたのだが……。
無人島に置き去りにされるという設定は、ヴェルヌ『十五少年漂流記』や、
バランタイン『珊瑚礁の島』、あるいはデフォー『ロビンソン・クルーソー』
などの漂流物語のフォーマットに則っています。
しかし、描かれるのは、心躍る冒険の物語ではなく、人間の内側にある
暗黒面や文明の空虚さ、そして絶望的なディスコミュニケーションです。
結末で、島での狂騒をなんとか生き延びた子ども達は、海軍士官に救助されます。
子ども達の状況を見て、イギリスの少年だったら、もっと立派にやれたはずだ、と非難する士官。
ここには、辛辣な皮肉があると思います。
なぜなら、子ども達が理性を失い、島の社会を崩壊させるずっと前から、
大人は核によって、世界全体の秩序を破壊してしまっているのですから。
子どもも大人も関係なく、内なる暗黒から目を背けてはならないのです。
イギリス〈4〉集英社ギャラリー「世界の文学」〈5〉
ウィリアム ゴールディング/平井 正穂
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