ということで、わたくしも読んでみました。ドストエフスキーも、当時世界文学とは言えなかったロシアの作家の中で、特に世界性を持つ作家として、その筆頭にゴーゴリを挙げています(他、プーキシン、ツルゲーネフ、そしてトルストイです)。
表題作がゴーゴリの代表作と言えると思いますが、外套を奪われた主人公が幽霊となる「外套」、怪奇談とも言える「鼻」の両作とも、訳者が解説で書いているように、ペテルブルグという都会の魔力と硬直化した官僚制への批判とを描いたもの、とみるのが妥当なように思います。
岩波文庫版その他の翻訳との比較はできませんが、この訳文のみ読む限りではごく自然な日本語として読めると思います。
トルストイ、ドストエフスキーという両大家の作品に触れて、ロシア文学に興味を持った方にはお勧めできる小説ではないかと思います。
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外套・鼻 (講談社文芸文庫)
吉川 宏人(翻訳)
価格: ¥1,260 (税込) 文庫 出版社: 講談社 発売日: 1999/02 ASIN: 4061976508 おすすめ度: ![]() Amazon ランキング: 510127位 発送可能時期: 通常24時間以内に発送 ![]() |
本書に収録されているゴーゴリの短編「外套」をはじめて読んだのは小学生の頃でした。プーシキン作の「スペードの女王」などと共にまとめられた「ロシア怪奇小説集」といった類いの本の中で読んだのです。
あれから30年が経ち、あらためて本書を手にしてみましたが、物語の内容は記憶していたとおりでした。それだけ子供心には強烈な印象を与える小説だったといえます。
あれから30年が経ち、あらためて本書を手にしてみましたが、物語の内容は記憶していたとおりでした。それだけ子供心には強烈な印象を与える小説だったといえます。
首都ペテルスブルグに住む万年下級役人のアカーキイ・アカーキエヴィチが外套を新調するのですが、街なかでそれを強奪されてしまいます。警察に事件として届け出るものの、お役所主義の警察は全く相手にしてくれません。外套を失った彼はやがて風邪をこじらせて他界してしまいます。そしてその後、夜な夜な人々から外套を奪おうとする役人の幽霊が現れるようになって…。
子供時代に手にした時にはもちろん怪奇談としてゾクゾクする思いと共に読んだのですが、今回はロシア帝政下の官僚機構の融通のきかなさぶりに強く目を引かれました。
書き出しからして「このお話はお役所の…」というものです。行政官がいかに権威的であり、その実態が<公僕>という名にはふさわしからぬ存在であるかを、幻想譚の体裁をとりながらも、痛烈に描写しています。
外套の盗難という小さな事件を通じて官僚機構の硬直ぶりを衝く。しかも悲劇的事件でありながら、どことなく滑稽な雰囲気を醸しつつ描く。その点に注目できる佳品ともいえる小説です。
ドストエフスキーと言ったと噂される伝説の言葉であるが、こんな発言が信憑性が帯びるぐらいロシア文学におけるゴーゴリの影響は決定的である。彼はウクライナ出身で作家になるべくペテルブルクに出てきたが、処女作が大失敗。一時下級官吏をしていた。やがてプーシキンに認められ、不滅の名作『検察官』『死せる魂』を書き、ロシアの大文豪になった。一方彼は、官吏時代の体験を題材にしたいわゆる「ペテルブルクもの」という短編を書いた。本書には万年下級官吏が外套を新着するが、それを剥ぎ取られ…という『外套』、朝起きたら鼻がなくなっていることに気付き、町中を探し回る『鼻』、精神病院に入れられた男の日記という体裁で、様々な文学的実験が試みられている『狂人日記』などが収められている。
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