@神秘主義者たちの描く宇宙のかたち。
A危機に直面する人々の脳裏にひらめく人生訓。
ボルヘスの文章には、@とAが端から端まで敷き詰められています。これらが軽く流せる人でないと、この人の文章の本意を汲むことは難しいでしょう。
「作家のための作家」と呼ばれた所以です。
彼の書く、感傷にひたる暇もない簡潔な文体はチェスタトン的で、読むのに少々骨が折れます。彼の描く世界は広大無辺でありながら、自壊する運命をも内包しており、実に複雑なのですが、ボルヘスは物語の骨子を「膨大な知識の独り語り」によって表現し、様々な世界をほんの10-20頁で語り終えてしまいます。短編一篇一篇が、伝奇SF一冊に相当する密度の濃さです。
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想像から人間を創り出し、消滅するまでの過程を描く「円環の廃墟」
イスカリオテのユダの行為についての論考群「ユダについての三つの解釈」
ほとんど要約のようで在るために、形而上の部分に比重が傾く推理小説「死とコンパス」
ひとつの言葉に対する仮定から広がる解釈が、現実世界と相反し合うまでを描く「トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス」
アカシックレコードのような「無限に続く図書館」の言語の混乱を描く「バベルの図書館」
などを含む、全十七篇。
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下に示したボルヘスの宣言文から、彼の小説作法が簡単に理解できると思います。いきなり核心に迫る外国語の新語句が現れるところや、全体をまないと意味が分からないところ、そして、全体がめた瞬間になるほどと思えるところが。
「二つの美学が存在する。鏡の受動的な美学と、プリズムの能動的な美学。前者に導かれて芸術は、環境もしくは個人の精神史の客観的な模写となる。後者に導かれて芸術は、自らを救い、世界をその道具とし、空間と時間という牢獄から遠く隔たったところで、独自のヴィジョンを創出する。これが<ウルトラ>の美学である。その意思は創造にある。宇宙に思いもよらぬ切子面を刻むことにある」
伝奇集 (岩波文庫)
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◆「死とコンパス」
美しい法則性に耽溺し、自らの推理に自己陶酔する名探偵エリック・レンロットが、
その性質を利用され、レッド・シャルラッハの仕掛けた罠に落ちてしまうという、
《後期クイーン的問題》を先取りした小品。
美しく抽象的な論理操作に淫した探偵が、世界の抽象化を押し進めた
先に待っていたのは、みずからの破滅であったという皮肉な構図――。
クイーンよりも早く、軽々とこの境地に到達したボルヘスの先見性には脱帽です。
▽付記
作中に出てくる「四文字(テトラグラマトン)」とは、
「ヤハウェ(JHVH)」のこと。
ヘブライでは神の探究をする際、「ヤハウェ」は文字にする
ことが許されていないということが、本作の背景にあります。
◆「八岐の園」
生れ故郷の地方の知事だった崔奔は一冊の本と迷路を
作るため、すべてを放棄し、十三年間庵に閉じこもった。
遺されたのは、無秩序な草稿と手紙の断片のみ。
手紙には、以下のように記されていた。
「われはすべてにはあらざるも、さまざまなる未来に対し、わが八岐の園をのこす。」
時間が分岐し、平行した可能世界が無数に存在するという
本作の世界観を念頭に置き、ミステリ作家の山口雅也さんは
『13人目の探偵士』を書いたそうです。
美しい法則性に耽溺し、自らの推理に自己陶酔する名探偵エリック・レンロットが、
その性質を利用され、レッド・シャルラッハの仕掛けた罠に落ちてしまうという、
《後期クイーン的問題》を先取りした小品。
美しく抽象的な論理操作に淫した探偵が、世界の抽象化を押し進めた
先に待っていたのは、みずからの破滅であったという皮肉な構図――。
クイーンよりも早く、軽々とこの境地に到達したボルヘスの先見性には脱帽です。
▽付記
作中に出てくる「四文字(テトラグラマトン)」とは、
「ヤハウェ(JHVH)」のこと。
ヘブライでは神の探究をする際、「ヤハウェ」は文字にする
ことが許されていないということが、本作の背景にあります。
◆「八岐の園」
生れ故郷の地方の知事だった崔奔は一冊の本と迷路を
作るため、すべてを放棄し、十三年間庵に閉じこもった。
遺されたのは、無秩序な草稿と手紙の断片のみ。
手紙には、以下のように記されていた。
「われはすべてにはあらざるも、さまざまなる未来に対し、わが八岐の園をのこす。」
時間が分岐し、平行した可能世界が無数に存在するという
本作の世界観を念頭に置き、ミステリ作家の山口雅也さんは
『13人目の探偵士』を書いたそうです。
何度となく読み返した短編集。今までにこれだけ私に影響を
与えた小説はあったかろうか?
この小説は未来をも予見した1冊とも言えます。
「バベルの図書館」は現在Googleが行なっているミリオンズ
ブックサーチを想起させるし、「記憶の人、フネス」は
今流行の脳科学ブームの先鞭をつけた内容とも言えます。
また「バビロニアのくじ」は柄谷行人もそのアイデアを
評価しています。
短編小説としては難解な部類だと思います。
私も何度か再読して理解した短編もあります。
小説の内容を圧縮すると哲学に近づく。
そして文体は極めて詩的です。最高の小説です。
与えた小説はあったかろうか?
この小説は未来をも予見した1冊とも言えます。
「バベルの図書館」は現在Googleが行なっているミリオンズ
ブックサーチを想起させるし、「記憶の人、フネス」は
今流行の脳科学ブームの先鞭をつけた内容とも言えます。
また「バビロニアのくじ」は柄谷行人もそのアイデアを
評価しています。
短編小説としては難解な部類だと思います。
私も何度か再読して理解した短編もあります。
小説の内容を圧縮すると哲学に近づく。
そして文体は極めて詩的です。最高の小説です。
おそらくこの作家の短編集の中では一番、密度が濃い短編集だと思います。
一つ一つの短編が非常によくできていて何度も読むとさらに理解や発見が広がり一冊だけでとても長く楽しめます。
この作家の短編集は不死や連続といった無限性がテーマになっている作品が多いです。
ひとことであらわすと迷宮といわれる所以でしょう。
一つ一つの短編が非常によくできていて何度も読むとさらに理解や発見が広がり一冊だけでとても長く楽しめます。
この作家の短編集は不死や連続といった無限性がテーマになっている作品が多いです。
ひとことであらわすと迷宮といわれる所以でしょう。
原著が大傑作なのは本当。間違いなくノーベル賞クラス(とってないけど)。ただ日本語が……
誤訳も多いけど、直訳的で文章になってない部分が多すぎます。
ボルヘスは詩人だから、単語レベルでリズミカルな所があって訳すのが大変なのは分かるんですが。
『幻獣辞典』の柳瀬さん辺りが新訳してくれればいいのに。
誤訳も多いけど、直訳的で文章になってない部分が多すぎます。
ボルヘスは詩人だから、単語レベルでリズミカルな所があって訳すのが大変なのは分かるんですが。
『幻獣辞典』の柳瀬さん辺りが新訳してくれればいいのに。



