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幽霊 (岩波文庫)
イプセン原 千代海
価格: ¥483 (税込)

文庫
出版社: 岩波書店
発売日: 1996/06
ISBN: 4003275047
おすすめ度:4.0
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「人形の家」の鏡像のような作品
これは、「人形の家」のノラのような人が、もしもそのまま因習の檻の中に留まっていたら…というお話。
結果として、悲劇になります。
個人的には、「人形の家」よりこっちの方が好きです。より劇的な展開を自分としては味わいました。
「人形の家」でもそうでしたけど、ラスト近くで、カードがひっくり返るように登場人物が醜くなるのが読んでいて怖かったです。私はこの2作でそれが一番印象に残っています。
幽霊とは…?
 因襲的な観念に囚われて放縦な夫のもとに留まり、夫亡き後も家名を守るために偽善に終始してきたアルヴィング夫人は、小間使いレギーナと二人暮し。そこへ病を患ってパリから息子オスヴァルが帰ってくる。間もなくアルヴィング夫人は、因縁の幽霊の再来を目の当たりにすることとなる。彼女は言う。

「私達には取りついてるんですよ、父親や母親から遺伝したものが。…きっと国中に幽霊がいるんですわ。…それにみんな、私達、光をひどく怖がっていますものね。」
彼女は意を決して「幽霊」を追い払おうとするが…。 

 法や道徳、宗教への不敬、近親相姦や自由恋愛の擁護など、過激な側面を備えつつもこの作品が面白いのは、その「幽霊」の捉え方の巧さゆえである。物語に因縁的な色合いを添えるス!パイスとしての妙だけでなく、より広義で社会的な意味での「幽霊」の存在が実に面白い。更に、抜粋部のアルヴィング夫人の最後の言葉「私達はみんな光を怖がっている」と、ラストのオスヴァルの姿が見事にシンクロする。劇作家イプセンの構成力の上手さが光る伏線である。
 難を言えば、主人公の魅力がいまひとつであるが、自分自身「幽霊」との対決に挑んだイプセンらしい、社会派作品である。




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