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桜の園 (岩波文庫)
チェーホフ小野 理子
価格: ¥483 (税込)

文庫
出版社: 岩波書店
発売日: 1998/03
ASIN: 4003262255
おすすめ度:4.0
Amazon ランキング: 55082位
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5喜劇「桜の園」………名訳です
この手の海外文学は新しく訳されるたびに
文章と感動のレベルが下がっていくのが常ですが
この小野さんの「桜の園」の訳は違います。
非常に読みやすく、各登場人物に感情移入が出来る作品になっています。
文体は丸みを帯びた暖かい感じであり、桜の園消失の存亡の中にも
自分のペースを失わずに生きている少し哀しくて可笑しい人々が生き生きと描かれています。
桜の園本来のコメディの趣旨を生かした日本語訳としては
多分唯一のものではないでしょうか?
訳者のあとがきを読むと全登場人物と作品に対する愛情がひしひしと感じられ
この作品の登場人物の生き方も欠点もその人物の個性と愛着を持って語り
訳されている台詞は登場人物の感情を良く吟味して訳されているように見受けられます。
通常は没落地主の悲劇性を強調する解釈が多いのですが
この訳文ではむしろ新しい時代に旅立っていく人々の明るい未来が垣間見えます。
そうした新時代の幕開けの中で90近い執事のフィールスが桜の園に留まるラストは泣けます。
各人が新しい人生の旅立ちの為に駅に出かける中で
桜の園を人生の終着駅にしなくてはならない老人のぼやき。
この訳文で初めて涙が出たシーンでした。

小野さんは「ワーニャ伯父さん」も訳されておられますが
是非「かもめ」「三人姉妹」も訳して欲しいものです。
5時代が変わるとき
それまでに持っていた権益を失って落ちぶれる人と新しく力を持つ人が現れるのは世の常ですが、その様が非常にリアルかつ切なく描かれている印象です。
特に、ラネーフスカヤ夫人のどうしようもなさ(彼女はとても良い人なのですが、状況の変化に合わせて自分が変わることができない)が非常に印象的です。
一方で、若い人たちは変わっていくし、新しい世界や生活に向けた生き生きとした感覚がある、というところも好きです。
3戯曲を読むより
 戯曲には読みやすいものと読み難いものがあります。大部分は後者だと思いますが、例外的に小説と同様に読みやすいものも存在しますが、本作品は後者だと思います。劇場で観劇した方がこれだけ読むよりも楽しめるのではないでしょうか。
4過去への憧憬と未来への展望
幼い息子を亡くし、外国生活をしていた地主ラネーフスカヤ夫人。外国生活の疲れと経済的困窮から、5年ぶりに南ロシアの領地「桜の園」へ帰ってくるが、その領地は既に借金の抵当に入れられ、競売にかけられようとしていた……。

農奴解放以降のロシアにおける時代の変遷を、去り行くものに対する一抹の哀しさとこれから来るものに対する不安と期待を絶妙に混ぜ合わせて描いています。過去と未来両方への思い入れのバランス感覚が素晴らしく、どちらに感情移入しても楽しく読める戯曲です。

4不思議な世界
ヨクナパトーファmeets the world of Alice and Meguro river. 有り得ないと思いつつもチェーホフの描く南ロシアの「桜の園」からこういった印象を受けた。フォークナーの描いたアメリカ南部から不気味さと薄ら寒い感じを取り除き、「不思議の国のアリス」でアリスが昼寝をした暖かい昼下がりを付け加えた、それはまさに青春ポップな目黒川の桜並木・・おもいっきり春です、暖かいんですといった雰囲気。しかし雰囲気はそうであってもこの戯曲で作者チェーホフは病んだロシアの今を描き、貴族の没落とブルジョワジーの台頭など目まぐるしく変貌するロシアを的確な視線で見つめていたのであった。

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可愛い女(ひと)・犬を連れた奥さん―他一編 (岩波文庫)
チェーホフ神西 清
価格: ¥420 (税込)

文庫
出版社: 岩波書店
発売日: 2004/09
ASIN: 4003262239
おすすめ度:4.5
Amazon ランキング: 96273位
発送可能時期: 通常24時間以内に発送

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5珠玉の短編集
 三篇とも、味わい深い。
 「犬を連れた奥さん」と「イオーヌィチ」は、エゴイストな中流階級の男の悲哀を描いていて、ある女性との出会いが、主人公の転換点になる所が、似ている。
 「犬を連れた奥さん」の方が、漱石の小説のような、しみじみと情感に溢れる終り方をするのに対して、「イオーヌィチ」の方は、戯画的な描かれ方で終わる。
 この二人の主人公の差は、ヒロインとの共感の差と孤独さの差でもある。自分の品を保つ張り合いには、“大切に思える誰かがいるのか”が、大きいのかもしれない、などと考えさせられた。
 「可愛い女」は、自分がなくて、周りの誰かに同調する事ばかりな女性の話。
 トルストイが、「女性というものが自ら幸福となり、また運命によって結ばれる相手を幸福ならしめんがために到達しうる姿の永遠の典型」として讃えているという解説の文章を読むと、時代の違いを感じさせる。
 そういえば、「戦争と平和」のナターシャも、こういう所があったかな…という気がする。
 
525歳未満禁止の小説。
 前回読んだのが、1997年3月だから、
 36歳でした。

 11年ぶりの再会です。

 36歳で読んだとき、とくに、「犬を連れた奥さん」の
 すごさは、きっと若いとわからんだろうな、と、
 感じたものです。

 たぶん、前回読んだときより、今のほうが、より、
 強く味わえたと思います。

 また10年たったら、どんな感じだろう。

 いずれにせよ、要は阿部昭のいう「25歳未満禁止」の小説ですね。

 こういう話を読んでいて、年齢を重ねるのは、むしろ
 すばらしいことだと、本当に思います。
5悲劇のような喜劇のような
チェーホフの人間観察の鋭さとあたたかさが感じられる短編です。
人のどうしようもない愚かしさや哀しさを鋭く描き出す
観察者としてのチェーホフの眼差しはたしかに鋭いのだけれど
そこに冷たさは感じない。現実的でありながらも、なんだかどこかやさしい。
「かわいい女」も「犬を連れた奥さん」も、リアルな話で、
読後感は複雑な味わいです。切ないような笑っちゃうような、苦いような甘いような。
その複雑な味わいは、生きているとよく遭遇することで
チェーホフの小説は人生を切り取っているといつも思う。
そしてこの苦いような読後感がなんでだか妙に心地よい。
100年以上前にロシアで書かれた小説だけれど、
「世の中」にはいつも同じ生き辛さがあるのかも、とも思ったりする。
5訳の良さに圧倒されました
高校生のころ、この「可愛い女」と「犬をつれた奥さん」は読んだのですが、どこが面白いのやら、まったく不明、という感想で、そのままうっちゃって置いたのですが、それから40年近く、岩波から改めて刊行されたので読み直して見てビックリ、これはもう、はっきり傑作ですね。そして、神西清氏の訳が本当に秀逸。近年の、正確ではあるけれど情感がきわめて薄い流行の訳とは、ダンチに異る世界です。
チェーホフの文章をたどると、人間の心の動きが詳細に眼前に現れ、何ともはや、これは大人にしか分らない小説なのでしょう。短い小説ですが、人生の何ともいえない成り行きを示して、心が重くもなり軽くもなる、といった感情が沸き上がります。
4人間観察眼
チェーホフの人間を観察する才能はずば抜けていて、しかもそれを短編小説という形で表現する力量は圧倒的です。
人間を観察し、細やかに描いていき、最後にストンと落とすような持っていき方は一作一作がウィットに富み、優れています。

ロシアという国はよくわからないと思っている方も多いと思いますし、ロシア文学というと暗くて長くて読みづらいというイメージが付き纏いがちですが、チェーホフの短編、特にこの本に収録されている短編は、ロシア文化を知らなくても十分楽しめると思います。

チェーホフは原文も訳文も読みやすいものが多いですが、この訳は(昭和15年の岩波文庫版を編集部が現代表記に改めたもの)原文のテンポのよさがあり、非常に読みやすいと思います。

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