「思えば、この世の厳しい矛盾と葛藤は、同情心を持つことができ、激しく怒ることのできる人の胸の中でこそ、痛切に感じられるものなのだから」(「無政府主義者」)
平時でない時には、普通ならば歴史に名を残さないような人間が、名を残すこともある。
人々の記憶から消え去っても、書物の中に、記録として生き続ける。
本書に収められている短編「ガスパール・ルイス」の冒頭には、このようなことが書かれているが、これはまさにコンラッドが描きたかったものなのではないだろうかと思う。
この短編集に登場する人物は、生きている場所も立場も、それぞれ違っている。
イギリスの田舎町であったり、革命戦争下であったり、死刑囚であったり、逃亡者であったり。
普通ならば歴史に名を残さずに消えていく「名もなき人々」の人生が、「エミリー・フォスター」「ガスパール・ルイス」のように、ある一人間の人生の物語として描き出されている。
誰も興味を持たないような小さな村での男と女の物語「エミリー・フォスター」、孤島でひっそりと暮らす男の意外な真実を語る「無政府主義者」がおすすめ。
どこかドラマティックすぎて古くさいと思う部分がないでもない。
それでもどこか異国の風を感じる物語群は、さすがコンラッドであると思わせられる。
コンラッド短篇集 (岩波文庫)
コンラッド/Joseph Conrad/中島 賢二
価格: ¥903 (税込) 文庫 出版社: 岩波書店 発売日: 2005/09 ISBN: 4003224868 おすすめ度: ![]() Amazon ランキング: 244794位 発送可能時期: 通常24時間以内に発送 ![]() |



