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恋愛指南―アルス・アマトリア (岩波文庫)
オウィディウスOvidius沓掛 良彦
価格: ¥588 (税込)

文庫
出版社: 岩波書店
発売日: 2008/08/19
ISBN: 4003212037
おすすめ度:5.0
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今も昔も好きものは・・・・・
 予備知識がなければ本書の作者オウィディウスが、紀元前1世紀に生きた詩人だとは、わからないだろう。それだけに当時の男女間の恋愛沙汰、夫や妻の浮気、閨房での睦言・椿事等々は、21世紀に生きる我々とまったくといっていいほど変わっていないことに、むしろ驚かされる。

 本文庫「第三巻」の最終ページ(142ページ)に以下のようにある。他の評者と異なる箇所を選んでおくので、もう一つのお楽しみを・・・・・。

 「・・・・女は骨の髄から溶けてしまうほどウェヌスのよろこびを感じるがいい。あのことは両者が共に等しくよろこびを味わうべきである。耳をくすぐる甘い声、よろこびが洩らすささやきもやめてはならぬし、愛の楽しみの最中に淫らなことばを吐かないのもよくない。生まれつき不感症の女も、偽りのことばを吐いて甘いよろこびを装うがいい。[男も女も等しく楽しめるはずのあの場所の感覚が鈍く、それと感じない女は不幸である。]・・・・・」とある。

 「銀座ママのセックス指南」ではない、2000年前の「恋愛指南」である。
古代ローマのハウツー本は楽しい
原著"Ars Amatoria"は、"The Art of Love"、すなわち『愛の技法』という意味。どうやって女の子を口説くか、口説かれた女はどう対応すべきか、男の品定め、女の品定め、上手な浮気の仕方など、テクニックを伝授するハウツー本。古代・中世のヨーロッパ人たちは、こっそり回し読みして楽しんだのだろう。アベラールとの悲恋で知られる才媛エロイーズも本書を引用・紹介しているから(「第六書簡」)、中世の修道女たちも読んでいたわけだ。古今東西、"実用書"には必ず需要があるが、今回ついに岩波文庫に新訳が登場。本書はさすが"官能詩人"の書だけあって、記述もストレートだ。旧訳(樋口勝彦訳、平凡社ライブラリー)と比べてみよう。「私は[女が]自分の喜悦をついもらす声を聞くと嬉しくなる。私に待ってくれとか、こらえてくれとか、いってくれるのは嬉しい。女の愛の狂的な、もう参ったという目つきを見たいものだ。彼女をぐったりさせたい。もうさわってくれるなと拒ましめたい」(旧訳p95)。「女が自分が味わっている喜びの声を洩らし、私にちょっと待ってとか、もうちょっと我慢して、などという声を聞くのが、私にはうれしいのである。愛する女が狂態をさらして、もう駄目というような眼をしているのが見たいものだ。ぐったりとさせて、当分のあいだもうさわらないで、などと言わせてみたいものだ」(新訳p92)。どうです、おおらかな古典を新訳で読むのもいいものでしょう。



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