アンティゴネー (岩波文庫)
|
ギリシャ悲劇の一として、云わずと知れた古典中の古典。訳文は読みやすいとは云えないが、何度も読めばじわじわと意味が立ち上ってくる。その瞬間がよい。素直に読んで、アンティゴネーとハイモンの悲恋や父たる王(クレオン)の寂寥に落涙するもよし、「自然法と人為法」(102頁)という観点から思想史上のドラマとして読むもよし。(即ち、「いったん国が支配者を選んだならば、事の大と小とを問わず、また正しかろうと、なかろうと、これに服従するのが当然」(47頁)として「人の法」の優越を説いていたクレオン王が、予言者テイレシアスの言にふれ、「天の定めた掟を守って、一生を終えることこそ、いちばんによいことではないか」(75頁)といわば「神の法」に改心するとき、それは来るべき時代に花開くキリスト教倫理への道を、知らず知らずのうちに先取りしていたかの観がある。)本文数十ページの小劇に過ぎないが、その世界はとてつもなく広い。
その後のヨーロッパ文学に多大な影響を残したギリシア悲劇を代表する三大詩人の一人、圧倒的優勝回数と平均順位の凄まじさを誇るソフォクレスの代表作。
彼の特徴は何と言っても倫理を巡る人間の苦悩、煩悶。透徹した眼差しは人類が歴史上何度も繰り返す悲劇を紡ぎ出している。
けれどもそこにある眼差しの暖かさも見逃せない。彼の描くヒロインの純粋な美しさ、精神の高貴さは神話的で理想的でありながらも人間味あふれ読者の心をつかんでやまない。
かのアリストテレスも賞賛してやまず、近代以降もドイツ観念論を筆頭に哲学・人文学が頻繁に引用参照した彼の創造した人物たちの織りなす物語は、現代を生きる私たちにとっても全く色あせることなく語りかける。
そして和漢に通じていることをうかがわせる流麗な日本語文のすばらしさも見逃せない。訳者は解説においてもまるで詩のように語りかけます。
ところでプラトン等のギリシア古典の邦訳が読みにくい・文章が不自然などとおっしゃる方がときどきいらっしゃるが、義務教育の古典で現代と異なる文体を持った文章から情報を拾うことをきちんとやってこなかったためと思われる。
普通に勉強してきた人なら、現在手に取れる邦訳版ギリシア古典の数々は決して読みにくくはない。この手の本をウィキペディアやら週刊誌読む勢いで読まないのであれば。
彼の特徴は何と言っても倫理を巡る人間の苦悩、煩悶。透徹した眼差しは人類が歴史上何度も繰り返す悲劇を紡ぎ出している。
けれどもそこにある眼差しの暖かさも見逃せない。彼の描くヒロインの純粋な美しさ、精神の高貴さは神話的で理想的でありながらも人間味あふれ読者の心をつかんでやまない。
かのアリストテレスも賞賛してやまず、近代以降もドイツ観念論を筆頭に哲学・人文学が頻繁に引用参照した彼の創造した人物たちの織りなす物語は、現代を生きる私たちにとっても全く色あせることなく語りかける。
そして和漢に通じていることをうかがわせる流麗な日本語文のすばらしさも見逃せない。訳者は解説においてもまるで詩のように語りかけます。
ところでプラトン等のギリシア古典の邦訳が読みにくい・文章が不自然などとおっしゃる方がときどきいらっしゃるが、義務教育の古典で現代と異なる文体を持った文章から情報を拾うことをきちんとやってこなかったためと思われる。
普通に勉強してきた人なら、現在手に取れる邦訳版ギリシア古典の数々は決して読みにくくはない。この手の本をウィキペディアやら週刊誌読む勢いで読まないのであれば。


