何故こうも現在の日本は単純で直情的なのだろうか。
ワーキングプアを嘆く若者よ「蟹工船」ではなく「苦の世界」を読め!
この希望もないような私小説のカタルシスを感じよ!
「小説が一番、母が二番、恋愛は三番」と言い放った小説家の生き様を
もがき苦しみを感じよう。
ただ宇野浩二はこうも言っている
「生きた、書いた、愛した」
この小説の向こう側を見よ。生き続けるんだ。
苦の世界 (岩波文庫)
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元は、ヒステリの妻に悩まされる男の話ということで始まったが、その妻を芸者にして離れてしまうと、男は無職で東京や千葉あたりをうろうろとする。
この作品の凄いところは、半田という男の嘘のつきかただと思った。半田は何の特にもならない、むしろ自腹で金を使って、すぐにばれるような嘘をつく。
宇野自身の傾倒していたという、ゴーゴリの作品とは何かが違うと思う。ドストエフスキーが「貧しい人」で主人公の口を使って非難しているような、人を馬鹿にしているところがないと思う。
芸者上がりでヒステリーの嫁。ウソつきでぐうたらな友人。世渡り下手な元上司。朴訥なだけがとりえの無口な母親。そして何をやっても駄目な自分。
生きることはつらく、苦しく、時には醜く、時には滑稽ですらある。
大の大人が花屋敷でメリーゴーランドに乗りながら束の間この世の憂さを忘れて笑い出す。珍しく機嫌の良い嫁と母親が仲良くやっているのをこっそり見ながら心の中で「ばんざい」とつぶやく。
人情話ではなく、冷たささえ感じさせる筆致で描き出される「苦の世界」。
まるで自分の人生そのものの話のようではないですか。


