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草迷宮 (岩波文庫)
泉 鏡花
価格: ¥525 (税込)

文庫
出版社: 岩波書店
発売日: 1985/08
ISBN: 4003102746
おすすめ度:5.0
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最高の日本語美
草迷宮は、私が鏡花の文章に心酔する契機となった作品である。脳髄を揺さぶるような前衛性と、珠玉の言葉の美しさに
彩られた鏡花の文章は、かつて日本語が到達したもっとも崇高な美学の結晶といっても過言ではなかろう。

鏡花の文章は決して一般受けするものではない。しかし、だからこそ多くの人に薦めていこうと、そう思わせる作品である。
香りと匂い
 寺山修司の映画「草迷宮」を観て 感嘆して 原作を手に取った。因みに映画「草迷宮」は 寺山の映画作品の中では最高傑作である。

 原作も映画に負けず劣らず 幻想的である。鏡花独自の美文が繰り広げる世界は ケレンに満ちている。この世界には 全く馴染めない方も多いと思う。一方 もう大好きで どっぷりと漬かってしまう方もかなりおられるとも思う。

 鏡花の映画化というと 鈴木清順の「陽炎座」が直ぐ思われる。清順と鏡花とは絶妙な取り合わせだが 寺山との相性も極めて良いと思う。寺山自身も臭みに満ちた映画作家である。鏡花の臭みとコラボした結果実に香しい映画が出来上がった。勿論「匂い」は強い。匂いの強い食べ物がしばしば非情に美味しいのは チーズや納豆だけではない。

明治のエンターテイメントホラー
異界が開けているのは、山深い森の中か、丘の先にある草原か。
「草迷宮」は若者の幻想を描いているのだと思います。親への憧憬とセクシャルな女。幻想世界に混沌と存在しています。男性の幻想を上手に小説に仕立てています。
私は「草迷宮」の三浦半島の自然の描写が好きです。武蔵野とは違う、ちょっと開放的な風景を楽しみました。その草原の一軒家が幽霊屋敷だった訳ですが、因縁話でもあり、ストーリーが冗長にならず、テンポがいいです。
もし泉鏡花が現代の作家だったら、すごいエンターテイメントホラーを書いてくれるに違いないと思います。
言霊の世界
泉鏡花の作品は、同じ時代に文学界が欧米化する中、まさに言霊とでもいうべき独特の古文体で、特にこの世の中と異界が交流する幻想文学の短編に真骨頂が発揮されたと考える。

幼い頃に聞いた手毬歌を追い求める青年がたどり着く先は妖怪入道の住む屋敷。普通ならば妖怪に殺されかねない状況下で主人公が難を逃れるモチーフにはイニシエーションの物語性を感じる。

古文体は読み慣れないと、難しいが、独特のリズムで言葉があふれだしてくる心地良さが魅力である。

寺山修司氏が映画化しており、鏡花の世界を熟覧たる映像で再現しており、こちらも鏡花ファンはビデオ必見である。

言葉の美酒
「芳(かんば)しい清らかな乳を含みながら、生まれない前(さき)に腹の中で、美しい母の胸を見るような心持(こころもち)の--唄」を求めての青年の遍歴。題名の「くさめいきゅう」の「くさ」は、草競馬や草野球の「草」。鏡花の謙遜であろう。言葉の迷宮は、母なるものへの高貴な捧げ物。巧緻にして繊細。読者を、この世とあの世の中間に拉致し、そこに宙吊にする結末の一行まで、最上等の日本語に酩酊して頂きたい。最近の日本の怪奇小説の文章の、粗製濫造に飽き足らない読者に薦めたい。手作りの吟醸酒である。



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