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五重塔 (岩波文庫)
幸田 露伴
価格: ¥420 (税込)

文庫
出版社: 岩波書店
発売日: 1994/12
ISBN: 4003101219
おすすめ度:4.5
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圧倒的な言葉の構築力
 五重塔の建立を任されることになった「のっそり」十兵衛の妥協のない一途な意志と、作者露伴の作品構築への漲るような意志がシンクロして物語りはハイテンションで進む。才能はあるもののうだつの上がらない仲間の評判もイマイチの十兵衛がリベンジすべく、一世一代の起死回生の大勝負に出る。しかしその行く手を阻む棟梁の源太との熾烈な駆け引きが繰り広げられる。命を下す感応寺大上人の深謀遠慮の采配とその行方、互いの妻の心的葛藤、火花を散らせる二人の矜持、義侠心、友情、謙譲、崇敬、畏怖、復讐、憐憫、恩義、同情、嫉妬等々といったありとあらゆる物語的パッションが縦横に炸裂する。ドラマは否が応でも盛り上がる。一旦物語に引き込まれてしまった読者はこの蜘蛛の巣から逃れることはほとんど不可能にちかい。しかしこの作品は、イメージの安易な造形に頼る小説ではない、あくまで言葉の構築力、つむぐ力が何にもまして圧倒的なのだ。ドストエフスキーばりの、露伴に憑依したかのようなドライヴのかかった登場人物の語りの饒舌と臨場感溢れる訴求力に息を呑む。あたかも十兵衛が柱に心血を注いで鉋をかけるように露伴は言葉に繊細な鉋をかける。映画化を嫌った露伴にとって言葉は命にほかならなかった。十兵衛の五重塔の完成が言葉の構築つまり作品としての五重塔の完成なのだ。それをこそ露伴は己に課した。露伴二十四歳の偉業である。突然の嵐にも倒壊しない自信をもって構築された「五重塔」が永遠に文学史に屹立することは疑いようがない。でも評価としては三星かな。晩年の作品の膂力に比べると力を意識しすぎた
迫力のある心理描写
この作品は、ラストの暴風雨のシーンの描写が有名なのですが、上人の仏説後の十兵衛と源太の二人、特に源太の心の動きの描写が迫力があって素晴らしいと思います。
「寄生木」としての生き方をあくまで拒否した十兵衛に対し、男気に拘った源太の強い意志と意志のぶつかり合いは、読んでいて寒気がするようでした。共に、「男」としての生き方を貫こうとしたのだと思います。
それと対照的なのが、二人の妻の描き方です。その心をなかなか理解できない女性たち。特に、お吉には全く理解することが出来なかったのでしょう。
こうした心理描写の凄みが、この作品の最高の読みどころでしょう。
建築家の本懐
建築を志すものに、この一冊は是非読んでほしい。

耐震偽装事件や景観利益の裁判などいろいろと世間を騒がす建築。

しかしそもそも建築とは何なのか。

私たちは何を建てようとしているのか。

それを教えてくれる作品だと思います。
人間力の総和による五重塔
 ご存知、文豪露伴の代表作。風采のあがらない主人公:のっそりの生涯の唯一の傑作:五重塔完成までのお話である。

 作中、のっそりの執念、棟梁のあり方、奥様の役割、また詳細に現れない腕自慢の職人達が生き生きと描かれ、「。」が三ページに一個くらいしかない読みにくい文体も気にならず、一気に読み終わりました。中でも、カリスマの如く君臨する大僧正のあり方には感動した。終盤、天災に打ち勝ったのは、まさに彼らの人間力の総和と理解したい。

 五重塔は、決して珍しい物ではない。東寺のそれ、法隆寺のそれもある。しかし、谷中の感応寺のそれは、露伴によって「五重塔」と称されるようになったと思う。

 本著作は、永遠に不滅です。

その後
一見、古文にも見え、読みにくいかと思えば、ストーリーが簡単なため、すぐに読めてしまう。
ストーリーは簡単だが、考えさせられることは多い。十兵衛をそこまでエゴイズムに駆り立てたのは何か?十兵衛はその後どうなったか?
芥川龍之介の「羅生門」にも似た、その後は読者次第、といった無限の結末。
僕はそこにも魅力を感じます。



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