オリジナルは2004年2月、ハーパー・コリンズ社。日本版は2006年2月15日リリース。
作者は1979年から5年間パトンルージュ市警に勤務した経験を持っていて、作家としての土台がその経験に基づくものなのが読み進むうちに実感できる。つまりあらゆる描写のリアリティが凄いのだ。単にミステリィの『死体』ではなく、市警として経験した『死体』の再構成のような描写になっていて、単なる想像の産物とは大きく異になる。そこが最大の魅力だ。
表題の『あなたに不利な証拠として』はアメリカの警察官が犯人逮捕の際に告知を義務づけられている、いわゆる『ミランダ警告』から引用されている。『あなたには黙秘する権利がある(You have the right to remain silent.)』に続く『あなたの発言は法廷で不利な証拠として扱われる可能性がある(Anything you say can and will be used against you in a court of law.)』である。アメリカの警察官というのは途方もなくハードな職業だな。
Anything You Say Can and Will Be Used Against You: Stories
Laurie Lynn Drummond
価格: ¥1,471 (税込) ペーパーバック 出版社: Perennial 発売日: 2005/01 ISBN: 0060561637 おすすめ度: ![]() Amazon ランキング: 24136位 発送可能時期: 通常10~12日以内に発送 ![]() |
某刑事TVドラマ(映画?)で、「事件は現場で起きてるんだ!」という名セリフがありましたが、そういう刑事のさらに下には、制服警官がいて、過酷な勤務に、しかし誇りを持って、従事しています。女性警官たちの生々しい日常、生々しい事件現場、家族、恋人との関わり、トラウマ、などなど、一人ずつに焦点をあてた独立の短編集であると同時に、それらの話が部分的に重なったり、後日譚となったり、味わい深いつくりです。
「え、それからどうなるの?」という終わり方のものもあります。一気に読むのもよし。あるいは、1日1話ずつ、コーヒータイムかビールタイムにでも読んではいかがでしょうか。
「え、それからどうなるの?」という終わり方のものもあります。一気に読むのもよし。あるいは、1日1話ずつ、コーヒータイムかビールタイムにでも読んではいかがでしょうか。
5人の女性警官を題材にした内容の重い硬質なサスペンスの短編集である。オムニバスではなく一連の流れがあり、巧みに絡みありながらストーリーが展開していく。
夢を抱いて入った警察組織の苦悩と挫折。どうすることもできない運命に翻弄され、身も心も極限状態が続いていく。いつの間にか麻痺し圧迫されていく心を開放するために、ついに社会から逃避していく。最後にようやく一条の光が差し込み、救われた気持ちになった。
とてもおぞましい、読むに耐えないを内容の描写が出てくるので、心臓の弱い方には不向きかもしれない。(私などあまり想像力を発揮しないように読んだが)
ちょっと勇気がいるが、読みながら魂が共鳴する、充実感のあるミステリーである。
夢を抱いて入った警察組織の苦悩と挫折。どうすることもできない運命に翻弄され、身も心も極限状態が続いていく。いつの間にか麻痺し圧迫されていく心を開放するために、ついに社会から逃避していく。最後にようやく一条の光が差し込み、救われた気持ちになった。
とてもおぞましい、読むに耐えないを内容の描写が出てくるので、心臓の弱い方には不向きかもしれない。(私などあまり想像力を発揮しないように読んだが)
ちょっと勇気がいるが、読みながら魂が共鳴する、充実感のあるミステリーである。
ルイジアナ州バトンルージュ市警に勤める5人の警官たち(キャサリン、リズ、モナ、キャシー、サラ)をめぐる10の短編小説集。
「このミス」の海外部門1位に選出された作品ですが、ある種の犯罪が起きてその真相に迫るというミステリーにはなっていません。
作者のローリー・リン・ドラモンド自身にバトンルージュ市警勤務の経験があり、痛ましい事件現場や酸鼻きわまりない他殺体の描写は、そうした修羅場を幾度も味わった者でなければできないほどの迫力をもっています。
こうした現実の陰惨さに、市民の安寧と社会の秩序を守るという高邁な理想のもとに参集したはずの彼女たち女性警察官たちは、心身ともに疲弊しきっていきます。疲労困憊する彼女たちは、恋人や家族や社会と均衡を保った健全な関係を築くことができなくなっていきます。
どの物語も、かつて抱えていたはずの大きな輝きと可能性を、いつのまにか過去のどこかで置きざりにしてしまった女性たちの哀しさが刻み込まれています。
殊に、あたかもエッセイのような趣をもった語り口の、キャサリンをめぐる3編には心をわしづかみにされました。キャサリンという魅力的で有能な警察官の、若かりし頃から殉職後までを綴った物語ですが、決して聖人君子ではないひとりの女性の人生の生々しさを溜め息とともに読みました。
それぞれの物語は決して心軽やかにしてくれることはないはずなのに、なぜ心魅かれるのか。
おそらくそれは、警察官ではない私も、彼女たちの姿に我が身を重ね置かずにはいられない今を生きていることを思い起こすからでしょう。社会に出たときに、持っていたあの思い。そして今の自分の思い。
彼女たちひとりひとりの中に、自分の姿を見ないことはない。彼女たちのやりきれなさが、この私のやりきれなさに重なることを思い返しながらの読書だったのです。
いろいろと思うところの多い、大人のための小説だと感じました。
警察機構で生きる女性たちを通して現実の犯罪現場に居合わせることが出来る。犯罪の謎解きはない。現実の事件はこんなものかもしれない。やりきれなさが残る。しかし作者の表現力は素晴らしく立派な文学になっている。格調がある。翻訳もいい。



